場所:ひたちなか市瓜連 「らぽーる」
講師:茨城県衛生研究所所長 (ひたちなか市保健所長) 土井幹雄 先生
まとめ:常陸太田市医師会 根本龍司
重要:ここに使用される図は著作権があります。勝手に使わないでください。
参考となるサイト
豚インフルエンザ情報=パンデミックPandemic 2009(H1N1)(2009/4/28更新)
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
現在の日本でのインフルエンザ流行レベルマップ
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html
WHOに報告されたヒトの高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)感染確定症例数
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/toriinf-case.html
国立感染症研究所 感染症情報センター 鳥インフルエンザ最新情報
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html
新型インフルエンザが大発生すると巷では、一部パニックを起こし、抗ウィールス薬(商品名 タミフル)をインターネットで違法に販売したり、買い求めたりしている。これは科学者が一生懸命予防策を練っておるところに、水を注ぐ行為であると遺憾に思うところであります。
「半分は偽物」処方せんなしのネット不法販売薬 WHOが調査 記事:毎日新聞社 提供:毎日新聞社 【2006年11月17日】 ネット不法販売薬:「半分は偽物」 処方せんなし----WHOが調査 【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)は15日、インターネットを使って処方せんなしで不法に販売される医薬品の半分は、ニセ薬だという調査結果を明らかにした。新型インフルエンザ対策の切り札と期待される「タミフル」や勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」など本来は処方せんが必要な薬を、処方せんなしで販売するようなサイトで安易に薬を購入することに警鐘を鳴らした形だ。 WHOと経済協力開発機構(OECD)などの調査によると、中南米や東南アジア、アフリカの一部の国では病院や薬局に流通する薬の3割以上が有効成分が入っていない偽物。 規制が厳しい先進国でのニセ薬混入率は1%以下だったが、会社の住所を明かしていないようなサイトで販売されている薬は半分以上がニセ薬だった。 WHOによると、世界のニセ薬貿易は現在最大で年間350億ドル(約4兆1300億円)規模。有害な成分が含まれていて服用した患者が死亡したケースも報告されているという。 |
トリインフルエンザは茨城がメッカになってしまいましたので、今までの不手際を挽回すべく徹底的に撲滅しなければ、茨城の、ひいては、日本の未来がないと、関係者は必死でやっているようです。この度は、実際に現場で感染予防に努められている土井先生のお話を聞くチャンスがあったので、話は専門的なところもあり早口だったこともあり難しかったが、その一部を小生なりに解釈し分かり易くまとめた。
タイトルは、「インフルエンザ、 ヒトートリー新型?」というもので、私たちが気になっている話題である。
1918年に「スペイン風邪」といって、インフルエンザがはじめてヒトに起こり、免疫力もないものだから大流行になった。世界で4000万人が死亡、日本でも40万人が死亡したといわれている物である。
新型インフルエンザという名前は、日本だけのようであり、世界では、「パンデミック(世界的大流行)」と言われているという事だ。昨年2005年8月にWHOが「パンデミックはもはや避けられない」という認識を示した。
現在、世界的に高病原性(H5N1)ウィールス感染域の拡大をしている。アジアに集中していた感染域が、トルコ・ルーマニア地区、南アフリカ、シベリア、ロシア、デラウエア-ニュージャージなどに拡大している。
ヒトインフルエンザは、咳、くしゃみ、鼻水、喉の痛み以外に、突然の頭痛、発熱、倦怠感、関節筋肉痛など全身症状。
潜伏期間は1〜3日。感染経路は飛沫感染(1回のくしゃみで、10万個以上のウィールス排出)。
空気感染(飛沫核感染)。が特徴である。
日本では冬期の1〜3月に流行するが、亜熱帯地域では雨期に、熱帯地域では1年中発生している。
A型インフルエンザ・ウィールスである。これは周りに赤血球凝集素3量体(H1〜16)=青色部分と、ノイラミニダーゼ2量体(N1〜9)=オレンジ部分により囲まれた構造になっている。
これが動物の細胞に取り付くとき、うまく結合できるHとNになっていないと、その細胞に感染できない。
ヒトのインフルエンザは20〜30年ごとに新しいタイプになる。
20世紀になり、1918年大流行のスペイン風邪はH1N1タイプのトリインフルエンザからヒト型になった。
図のように、1957年のアジア風邪はH2N2タイプで日本では1万人が死亡した。
死亡例の85%は65歳以上の老人である。
1968年の香港風邪はH3N2タイプ、日本の死者は1231人、
1977年ソ連風邪は中国・香港・シンガポール・ソ連で大流行、主に20歳以下に感染した。
このような変遷から、そろそろH5とかが出てもおかしくないのである。
人間のインフルエンザは、H1〜3N1〜2である。宿主である水鳥はH1〜15N1〜9といろいろな種類のインフルエンザを持っている。
現在騒がれているのは、H5N1というトリインフルエンザであるが、本来ヒトには感染しないはずである。
しかし、各地でH5N1のヒトへの感染例が出ている。まだ日本では見られない。
また、日本で現在騒がれているトリインフルエンザはH5N2と別なタイプである。
このヒトへの感染例はどこにも見られていない。
トリインフルエンザには、死に至る高病原性のもの(トリでは100%死亡する)と、産卵低下か無症状の低病原性のものがある。
過去が示すものは、ヒトインフルエンザになるのは、すべてが低病原性のもである、ということである。
H5N2タイプのウィールスは、低病原性であり、ヒトインフルエンザになる可能性があるらしい。
これはアジアタイプとは違い、グアテマラのタイプにどういうわけか近いというのだ。まだ理由はわかってない。
現在考えられいる、ヒトインフルエンザになるルートとは、ヒトあるいは豚が低病原性のトリインフルエンザにかかって、今流行りのヒトインフルエンザに同時に罹るとき、ウィールス遺伝子の再集合というのが起こって、図のように遺伝子が交じり合った新しいインフルエンザウィールスが出来上がるというものだ。
2重にかかるというのは、めったにないことではあるが、たとえば、流行のインフルエンザに罹り、まだ発病してない時期に、鳥の研究者が水鳥の調査で、鳥の糞(糞には多量のウィールスがいる)に触ったとか。 こういうことがよくあることらしいので、研究者あるいはそのような従事者は自己管理に注意しなければならない。
H5N1タイプは拡大傾向がある。貧困な地区に多く発生し、十分な感染予防対策がなされてないというのが、拡大する原因である。
さて、茨城県に見られるトリインフルエンザはH5N2タイプのもので、ベトナム・インドネシア・メキシコのH5N1とは違うものある。
茨城県では、H5N2の陽性を示した養鶏所に対しては、図のような対応により、ウィールスの拡散と死滅化を図っている。H15年12月2日、現在でこれに従事した人は、のべ約3万人である。
これらの中でH5N2トリインフルエンザを発病した人は一人もいない。ただし、不吉な兆候が見られるので、いささか不安は残る。
それは、茨城と埼玉の養鶏所従事者と防疫作業従事者のH5N2抗体を調べたところ、抗体が4倍以上の陽性を示す人がいることが最近わかった。
この抗体検査は正確な検査ではない(まだ世界で認められてない)ので、間違って陽性を示したかもしれないという不確実さがあるが、不気味な様相を呈している。
殺処分のトリも卵(1日80トン)も焼却処分。消毒のため消石灰は3〜5cmの厚さで、土・建物・機械などすべてを覆い尽くすそうだ。
現在、殺処分になった養鶏所からは、卵も出荷されないので、しかも卵の中身にはウィールスは感染しない。低病原性のウィールスは、トリの気管と腸に感染するので、念のため、すべての卵の殻は次亜鉛素酸ソーダで消毒している。だから万が一でも、市場に出ている卵は安全だといえる。
しかし、H5N1のような高病原性ではトリの全身にウィールスが見られるので、殺処分というのは、かわいそうだが仕方がないことだ。
理由は、
(1)症状がなくてもウィールス感染した可能性。
(2)低病原性から高病原性に変化する可能性。
(3)高病原性に変化した場合、人への感染の可能性。
(1〜3)はゼロではないからです。
感染経路が不明時の対応は、
(1)隔離(感染経路の遮断=移動制限、消毒の徹底)。
(2)感染源の除去(-->殺処分、鶏糞処理、周囲の消毒)
が徹底されなければ、汚染の拡大は防げない。
メキシコでは1995年から、H5N2が出ている。長引けば、ウィールスの変異の可能性が大になるので、早く徹底した対応で完全撲滅を望みたい。
世界的大流行は、土井先生がいうのには、近い!。10年は待たない。3年ぐらいだろうか。という。 専門家のある種の危機感で、すこし脅しが入っているかもしれないが、用心したことに越したことはないと緊迫感を感じる。
図は、土井先生が感じる危機感の根拠だ。ベトナムでは宗教的な理由からトリを大事にし、家族同然に扱うらしい。
風邪を引けば、鼻水を口ですすってあげるというくらい。トリと濃厚な接触をしている。
この話を聞くと、ベトナムでひとたびヒトインフルエンザが流行れば、ウィールスの変異は確実だなと感じる。ひょっとしたら新型はベトナムあたりか出るのだろうか?私個人としては、当分、近づくまい。
1918年のスペイン風邪が世界中に広まるのには、交通の便の関係だろうが3〜9ヶ月かかった。しかし、今やジェット機で移動する、しかも移動する人がものすごい数なので、先生の予測では4〜7日で世界中に広まるらしい。
新型で、日本での死者はピーク時で1週間に8000人と土井先生は予測している。衛生環境、年齢、抵抗力、治療薬などの条件で変化するだろうが、恐ろしい数字である。
世界的大流行が起これば、それは医療の面でももちろんのこと社会的経済的に大打撃を受けることは間違いない。これを防ぐことは、人類の使命みたいなもんだ。
土井先生は、世界のどこか、1個所で新型インフルエンザが発生したら、世界の英知と財産を集結して新型を撲滅しないとだめだという。たぶん100人の患者で押さえ込むことができれば、世界的大流行は抑えられたといって間違いないが、もし200人なったら、もう大流行は抑えられない。という。
今 政府は抗ウィールス薬のタミフルを備蓄するように政策をとっているが、しかもすでに1500万人分確保し、世界の需要の85%を日本で占めている。しかし、この政策に土井先生は疑問を投げかけている。
de Jong MD et al. NEJM. 2005;353:2667-72 (Nikkei Medical 2006.2 133 写し)最近のデータ-であるが、ベトナムの8人の患者がタミフルで治療を受けた。しかし その内、2人がタミフルに高度の耐性を示した。一時は効いたが、経過中に耐性化したという例で、タミフルを使えば使うほど、耐性のウィールスが生じるという事実を我々は見てしまった。
この事実は、日本の政府は行っているタミフルの備蓄は、何も解決しないということを示唆しているものだ。
巷では、個人でタミフルを買い込んで、どのように服用するのかわからないが、その乱用は極めて悲惨な結果を招くことになりはしないかと危惧するものである。自業自得といえば責任逃れになるかもしれないが、人類の重大な危機に、抜け駆けは、やはり神は許さない。
地球上のどこかで、新型インフルエンザが発生したら、全知全能を持って、患者発生を100人以内で撲滅するよう対処するというのが、今のところ最大の防御方法のようだ。タミフルを備蓄し、自分だけがよければという考えでは、世界的大流行とは戦えない。個人的には、図のように マスク と 手袋、 手洗い と うがい というのが最も効果的な方法である。イソジンや次亜鉛素酸ソーダを使うと完璧だ。 だといいのだが・・・・ (・・;
ワクチンを作るには、最低6ヶ月を要する。最初の患者が出てから1ヶ月程度で大流行になってしまったとしたら、新型インフルエンザには、ワクチンは間に合わない。 この度の新型インフルエンザには、人類の英知こそが勝利を得るものだ。 姑息的な手段は何の役にも立たない。